相談事例

事例1:亡くなった後、多額の借金が発覚しました

主人が亡くなり、葬儀が終わったのも束の間でした。
役所関係の手続きや取引口座の確認、クレジットカードの確認などをしている時に相続手続きも必要だと知り相続人の確定と相続財産の調査を行いました。
すると主人には生前に残した借金がある事が判明し、それは預金残高をはるかに上回るものでした。
主人が残した生命保険は私が受取人なっております。
主人は年齢も若くして亡くなったので、主人の父母も健在です。
主人の兄弟もお兄さん1人と妹が1人いますが、生前から主人と仲が悪く疎遠になっております。
相続人は私と3人の子供達です。
相続放棄をしてしまえば良いなどと親戚からは言われていますが。
保険金で借金を清算するべきでしょうか?
どうして良いのか正直分かりません。

A.相続放棄は、相続を知ってから3ケ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。
ただし、今回の事例では、相続放棄をすると各相続人に、ご主人の借金と言う負の財産の相続が必然的に及びます。
つまり妻が放棄すれば子供に、子供が放棄すればご主人のご両親に、ご両親が放棄すればご兄弟に、ご兄弟が亡くなっている場合、ご兄弟の子供達に相続されます。
親族に事前に連絡を入れていただく必要があります。
しかしご主人のご兄弟との関係性から悪い知らせを連絡することは大変かと思います。
ただし黙っていてもいずれ相続がおよび期間が過ぎてしまえば相続放棄の手続きもできなくなってしまいます。
もっとも連絡先すら分からない場合もあると思います。
提携先の弁護士と協力してご主人のご兄弟を調査して連絡をとり無事、全員が相続放棄の手続きができました。
あと生命保険金は保険受取人の固有の財産です。相続財産ではありません。
今後のご家族の生活の為に有効活用していただきました。
今回ケースで学べた事は、できればご兄弟や親戚の方と生前に年賀状などのやり取りなど良好な関係つくりが大切なことです、家系図を作成するなど相続に対する準備も良いかと思います。

父親が所有している不動産で兄弟喧嘩になる

実は私の父親が自宅のそばでアパートを3棟ほど所有しております。
建物の管理は自主管理で81歳になる父親と78歳の母親の二人で監理しておりますが、母親も最近は随時と体が弱ってきているように思います。
父親も年のせいか物忘れがひどくなって来ました。
私は実家の近くで妻と子供2人と生活していますので、実家にはちょくちょく顔をだせるのですが、弟は遠方に行ってしまい、年に1回か2回帰って来るぐらいです。
両親が高齢になったこともあり、弟と今後について話合いをしましたが、弟は両親に何かあれば不動産を処分すればいい。それだけの考えでした。
両親の身の回りの世話の事など何も考えていなく。あまりの身勝手さに私もカッときて弟と口喧嘩となりました。
父親も母親も若い頃はかなり苦労したらしく、やっとの思いで手に入れた自宅や不動産にはたくさんの思い出が詰まっていて、できれば自分たちが生きている間は売りたくないと言っております。
両親とも高齢ですし、今後父親がボケたりしたら、どうしたらいいのか不安です。

A.今回の事例では、お父さんとお母さん、息子さんそれぞれに個別にそれぞれお話をお伺い致しました。
まずはご家族それぞれの考えを整理する必要があったからです。
お父さんとお母さんの思いは、不動産はやはり処分したくはないが、自分達だけで管理をするのは正直むりがあることは分かっている。
息子たちに管理してもらいたいが、と思っておられました。
この様な状況から今回は家族信託と信託財産以外の残余財産の為に公正証書遺言との併用をご提案いたしました。
家族信託のスキームとしましてはお父さんを委託者、長男を受託者、当初の受益者をお父さんにして信託契約を組みました。
簡単に言いますと、賃貸アパートの管理などを息子さんにお願いしてそのアパートからの収益をお父さんに渡す契約です。
今回は、もしもお父さんの判断能力が低下しても対応できるように委託者長男に管理だけでなくアパートの処分権限と金融機関からの借入権まで与えて将来のことに備えた契約内容にいたしました。
お父さんが亡くなった時は受益者をお母さんに変更して老後の生活資金を受け取れるようにいたしました。
その他もろもろの契約はありますが、とにかくお父さんお母さん二人がホット笑って帰って行かれました。

遺産分割協議書で協議案が決められない

そのご家庭は父と母と長男次男の4人家族。
小さい頃から兄弟のなかは良く、いつも笑顔の絶えない幸せな家庭だったそうです。
ある日父親が急に倒れ診断の結果、悪性の腫瘍が見つかり医師の診断では持ってあと6ケ月だろうとの事でした。
母親も父親の看病に疲れたようで以前より元気が亡くなって行きました。
今まで仲の良かった兄弟も父親が病気なってからというもの両親の介護などの面倒をどちらが見るのか言い争うようになってしました。
それから間もなく父親は亡くなってしまいました。
その後すぐに父親の後を追うように母親も亡くなってしまいました。
本当に悲しい思いをいたしました。
問題は父親が残した父名義の土地と建物(東京都内にある50坪ほどの土地と築年数の経った建物でした)の遺産分割等の話し合いですが、仲が悪くなってしまった関係では話し合いはなかなか難しい状態でした。

A.現状では兄弟間では話し合ってもまず合意が取れない事も予想できた。
また今回ご兄弟は既に独立されて個々に家を所有されていた事もあり、私どもが代理人となって行う相続不動産の売却業務を提案し、売却代金を法定相続である2分の1ずつで分け合うことをご提案いたしました。
立地条件の良い土地だったせいか、かなり高い金額で売却する事ができ、もろもろの手数料を引いて兄弟で法定相続分ずつわけて遺産分割終了となりました。
ただ今回最後まで兄弟は顔を合わせる事がなかった事が心に残っています。

未成年者がいる場合の遺産分割 団信

父親58歳、母親55歳、息子19歳の仲の良い3人家族でした。
息子さんは大学に行き、母親は専業主婦、父親は長距離貨物大型自動車を運転して北海道から九州まで全国を移動されていました。
そんなある日、父親が仕事の為に高速道路を走行中に突然背後から居眠り運転の貨物トラックが、高速で勢いよくぶつかって来ました。
父親のトラックはその衝撃で中央分離帯に衝突し大きく横転してしまいました。
父親の運転するトラックの運転席はほぼ大破して、父親は衝撃で外に投げだされて不幸にも即死でした。
突然に亡くなってしまいました。

泣きながら相談に来られた母親は、相続手続きについてどうすればいいのかわからず。
ただ困惑されているばかりでした。
まずは相続財産の整理をしてみますと、相続財産としては、家族3人で住んでいた自宅(一戸建て住宅)と預貯金500万円。
ご自宅については住宅ローンが残っており、抵当権も付いた状態です。
ご主人の突然の死に、これからの生活をどうするのか、途方に暮れておられました。

A.息子様は19歳で未成年の為に相続手続きには家庭裁判所の手続きが必要となります。
通常は相続手続きを行う場合、相続人全員での遺産分割協議を行い、その話し合いの結果で財産を分け合っていきます。
しかし、未成年者がいる場合はそう簡単にはいきません。
母親は利益相反となり、実の親であっても未成年者である息子の代理人となれないからです。
この場合は、未成年者である子供のために家庭裁判所で特別代理人の申立てをおこないます。
家庭裁判所に遺産分割協議書の案を提出して家庭裁判所の許可を得られないと審判の中ではねられてしまいます。
特別代理人には、ご親戚の方になっていただき遺産分割協議書の案の作成となりましたが、息子さんの気持ちは将来的に息子さんも同居して家を継ぐ意思がはっきりしていてお母さんの面倒も見ていきたいという気持ちがありました。
それであれば、自宅をお母さんと息子さんの共有にして預貯金は息子さん名義の口座を作りました。
息子さんが未成年と言う事もあり通帳の管理はお母さんにお願いすることとしました。
住宅ローンの残ったご自宅ですが、住宅ローンを組む時にご主人さんが、もしもの場合に備えて団体信用生命保険に加入していないか確認をとりました。
幸い加入していたためにご自宅の住宅ローンの返済は一切無くなる事を伝えると、涙ながらに亡くなったご主人に感謝されておられました。
また今回の事故はご主人が完全に被害者だったので相手からの損害賠償による保険金が受け取れる事、保険金は固有の財産であり相続税は課税されない無税である事を伝えると、ありがとうございます。
と言っていただきました。

兄弟仲良く不動産を守ってほしい(親の想い)

父親、父朗(80歳)は、世田谷区に世帯30世帯の大型収益マンション1棟を所有しています。
息子は長男一郎、二男次郎、三男三郎の三人息子達で普段から仲は良く将来的にはそのマンションを息子3人に平等に相続させたいと考えていました。
マンションの管理は、長男一郎に任せたいが、将来的にマンションの老朽化に伴う大規模修繕の問題もあり、父朗亡き後に兄弟三人が揉めないか心配である。

A.今回の事例では、父朗も80歳と言う高齢であり認知症のなった時のことも考えて迅速な対応が必要でした。
まず、父朗を委託者、長男一郎を委託者とし父朗と一郎との間の契約において当該マンションを信託財産とする信託契約を設定します。当初の受益者として父朗を指定し父朗が生前中はマンションから受ける賃料収益を父朗が単独取得いたします。
そのことにより父朗の生前中は、受益者が父朗自身ですので、贈与税や不動産取得税などの課税はありません。
父朗の死後は第二次受益者を長男一郎、時二男次郎、三男三郎の3人で受益権は各3分の1ずつ取得いたします。
この信託契約において、将来的には受託者長男一郎の判断で当該マンションを管理、修繕、建替え、売却処分できるように設定しておきます。
この家族信託契約により、父朗の生前は長男一郎に財産管理を任せる事で認知症対策となり、父朗が亡くなった後は、第2受益者として兄弟3人に受益権を準共有させることで二男次郎と三男三郎は賃料収益うちから配当を得ることができます。
ただし、長男一郎の管理、修繕、建替え、売却処分等の判断について二男次郎と三男三郎は口を出すことができません。
よってマンションの管理、修繕、建替え、売却処分等についての兄弟3人のもめ事はなくなります。
今回の家族信託を通して兄弟三人仲良く資産を守って行ってほしいという、親の心からの想いを実現することが出来たのではないかと思います。